
新宿駅から徒歩約1分。黄色一色に彩られたビルに、若い女性たちが吸い込まれていく。クレーンゲーム専門店「ME TOKYO SHINJUKU」だ。運営するのは、パチンコホール最大手のマルハン。ブランドコンセプトは「感情解放区」。
なぜマルハンはこの業態を立ち上げたのか。そしてME TOKYOはどこへ向かうのか。立ち上げに関わったマルハンの淡路氏に聞いた。
「狙いすぎない」が狙い。だからME TOKYOは黄色い
——まず、ブランドコンセプトの「感情解放区」について教えてください。
一言でいうと「空気感」なんです。「ここがおすすめですよ」と勧められて行く場所ではなくて、「なんだかここに集まっちゃう」——そういう場所でありたい。人が感情を素直に出せる場所、それが感情解放区です。
——イメージカラーの黄色は、どう決まったのですか。
リサーチでは、女性は「ピンクに惹かれる」という結果が出るんです。でも、今の若い世代はピンクピンクした空間にすると、「あなたたちをターゲットにしていますよ」という押し付けに見えて、逆に嫌がってしまう。だから、あえて黄色にしました。狙って集めるのではなく、空気感で自然に集まってほしいんです。

プライズでは差別化できない。だから「体験」で勝負する
——クレーンゲーム専門店が次々に生まれるなかで、ME TOKYOの明確な違いはどこにありますか。
正直、プライズそのものでは差別化しにくいんです。ME TOKYOの場合は、3階の撮影ゾーンやプリクラ、コスプレ衣装の貸出——ああいう複合的な体験が強みだと思っています。ただ、オープンの時からうまくいっていたわけでは全然ないんですけどね。当初の3階は簡素な衣装しか置いていなくて、誰も借りてくれませんでした。そこから当初のコンセプトに立ち返って企画と改善を重ねて、集客が一番難しいと言われる高校生から24歳くらいまでの女性に、「ここに私たちはいていいんだ」と感じてもらえる場所になったと思います。
——撮影ゾーンやプリクラは、今後も核として維持していくのですか。
プリクラとコスプレを合わせた「コスプリ」は核として残しつつ、推し活やイベントのような要素を、場所や地域性に合わせて組み込んでいきたいですね。


接客に活きる、マルハンの30年
——ターゲット層の若い女性は、グイグイ来られる接客を嫌う世代でもあると思います。接客はどうされているのでしょうか。
立ち上げメンバーはマルハンの店舗で働いていた人間が中心なんです。店長もマネージャーもプライズは未経験でしたが、お客様との距離感を大切にする接客の基礎は、すでに身についていました。
——店内にスタッフ全員の顔写真パネルがありますよね。マルハンの店舗でよく見る文化だなと感じました。
「スーパースター制度」ですね。ああいった制度は25〜30年近く続いているものです。長年培ってきた接客の文化を、ME TOKYOでも受け継いでいます。
きっかけは「マルハン新宿店」の閉店だった
——そもそも、マルハンがクレーンゲームをやろうとなった最初の一歩は何だったのでしょうか。
もともと社内にはL&A(レジャー&アミューズメント)事業部があって、静岡や柏でボウリング場などを運営していました。そんな中で、パチンコの「マルハン新宿店」が閉店することになったんです。あの場所をどうするか、という時に、立ち上げ責任者の高原が現在のME TOKYOを計画したという流れです。
——ME TOKYOのあの場所に、もともとマルハンのパチンコ店があったんですね。
マルハン新宿店は、当時のマルハンでもかなり強い店だったんですよ。その跡地が、今のME TOKYOになっています。
——パチンコホールの運営で培ったものは、クレーンゲームにも活きていますか。
業態としては違いますが、通じるものはすごくあると思います。市場のトレンドを読みながらお店を作っていく考え方や、店舗運営・接客のノウハウ。マルハンとして蓄積してきたものが、ME TOKYOでも活かせています。
——逆に、違うなと感じる部分はありますか。
自由度の高さですね。アミューズメントの方が、アルバイトを含めたスタッフ一人ひとりに任される範囲が広いんです。自分で考えて決めたことが結果に反映されるので、スタッフはすごく楽しいと思いますよ。実際、ME TOKYOのブランドができてから、「ME TOKYOで働きたい」という新卒の応募も増えているんです。
参入が相次ぐ市場を、どう見るか
——近年、パチンコ業界からのクレーンゲーム市場への参入が続いています。この動きをどう見ていますか。
同業の動きは当然注視していますし、新しい店舗はすぐに視察にも行きます。今は市場全体が伸びていて、新しいお店が次々にオープンしている状況です。それだけこの業態に可能性があるということだと思います。
——コンビニや駅など、生活動線への小型設置も増えています。
そうですね。ただ、ME TOKYOはその真逆で、「誰が見ても一等地」という場所にしか出さないと決めています。もし違う形態をやるなら、別のブランドを立ち上げると思います。
——市場が盛り上がるなかで、大切にしていることはありますか。
マルハンはコンプライアンスを何より大事にする会社です。お客様の期待を裏切らない、健全な運営を積み重ねていくこと。業界全体が長く愛される遊びであり続けるためにも、そこは大切にしたいですね。
ブームで終わらせない
——最後に、ME TOKYOの未来像を教えてください。
全国の主要都市、そして将来的には海外も視野に入れています。感情解放区というコンセプトと、イメージカラーの黄色はそのままに、若い女性が自然に集まる場所として広げていきたいですね。あの黄色いビルは、一目で「ME TOKYOだ」と分かるブランドの看板ですから。
——ブランドを保ち続けるために意識していることはありますか。
若い子は「ダサい」と思った瞬間に離れてしまいます。だから常に支持され続けなければいけない。池袋と新宿の店舗を観測点にして、Z世代女子のインサイトをリサーチしている「エモーションリサーチ」のような形で若い女性のリアルな声を拾い続けて、「どこ行く?」となったらME TOKYOが連想に上がってくる——そういう存在にしていきたい。今のブームだけに終わらない、常に女性に支持される場所を目指します。


まとめ
「狙いすぎないことが、狙い」。インタビューを通じて印象的だったのは、ME TOKYOという場所が、緻密なリサーチとお客様への観察に裏打ちされながらも、あくまで「自然に集まりたくなる空気感」を大切に作られているということでした。
クレーンゲームだけに頼らず、撮影ゾーンやプリクラといった体験まで含めて一つの空間を作り上げる姿勢。そして、その土台には、マルハンが長年培ってきた店舗運営と接客のノウハウがありました。市場が大きく盛り上がりを見せるいま、健全な運営を大切にしながらブランドを育てていくというその歩みは、業界にとっても心強いものに感じられました。
「感情解放区」が次にどの街に生まれるのか。ME TOKYOのこれからに注目です。
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